子供の時期の治療について

子供の時期の治療の考え方


子供達は心身の成長発育に伴い、体つきや顔つきだけでなく、お口の状態も非常にダイナミックに変化してきます。
その中で、むし歯もなく、歯ぐきも健康で、歯並びやかみ合わせにもほぼ問題が無い、きれいで・良くかめて・健康なお口を
育てていくためには細かい気配りが必要です。


約2歳半前後に乳歯列が完成し、5・6歳頃から12・13歳頃まで永久歯への生えかわりがすすんでいきます。
当然のことながら、あごや顔面も成長してきますが、その過程で、永久歯のすき間不足やガタガタ等の歯並びの問題、
出っ歯や受け口等のかみ合わせの問題、うまく噛めない、口が閉じにくい、発音が悪い等の問題が生じてくることがあります。


それらの問題に対しては、各種資料(レントゲンや歯型など)の分析により原因をきちんと見極め、適切な時期に必要最小限の治療を適切に行うことが非常に重要であり、口の中だけでなく心や体の成長発育についても気を配り、適切な治療やケアを行うことこそ、長い将来にわたって綺麗で・良くかめて・健康なお口を得ることができると当医院では考えています。

あごや顔面の成長発育を利用した治療の重要性

歯ならびやかみ合わせの問題の原因は・・・  骨格の問題?  歯の生え方の問題?


子供の時期において、永久歯のすき間不足やガタガタ等の歯並びの問題、出っ歯や受け口等のかみ合わせの問題、うまく噛めない、
口が閉じにくい、発音が悪い等の問題に対して最も大切なことは、これらの問題がどのような原因で生じているのかをきちんと把握することです。


★骨格的な問題(前後・左右・上下関係)が原因なのか。
★それともの骨格的には問題が無いけれど、歯の大きさや生え方(前歯の傾きや奥歯の生えている位置、生えかわりの順番等)
が原因なのか


歯並びやかみ合わせの問題を引き起こしている原因を正確に把握することが治療開始への第一歩となります。


子供の時期の治療において、『あごや顔面の成長がどのくらい進んでいるのか?』を正確に把握することは、最も大切です。
歯科矯正治療は、『8歳になったら開始』というように年齢を決めて開始するものではありません。
例えば、同じ10歳:小学校4年生で考えた場合でも、大きい子もいれば、小さい子もいます。男の子と女の子では成長発育のスピードや時期も当然異なります。永久歯の生えかわりも各個人で異なります。


それらを画一的にとらえ、治療開始の時期を全て同じように決めることはできませんし、もちろん治療方法も各個人で異なります。当然のことながら、骨格的な問題(上あごや下あごが小さい等)があれば、成長を利用した治療を行わなければ、骨格的な問題を改善することはできません。


上あごが出ている??  下あごが後退している??  上の前歯が出ている??  下の前歯が後方へ倒れている??


下あごが出ている??  上あごが後退している??  下の前歯が出ている??  上の前歯が後方へ倒れている??

あごや顔面の成長発育の様相を正しく把握することが最も大切

あごや顔面の成長発育の様相


あごや顔面骨格の成長発育は、前後方向・横(左右)方向・縦(上下)方向に分けて考え、正確に把握しなければいけません。
また、成長発育の時期と成長量は部位により異なるため、歯科矯正治療の治療の必要性の有無、治療開始時期の判断、治療の方法に多大な影響を及ぼします。


そのため、より効果的な歯科矯正治療を行うためには、あごや顔面の成長発育を正しく理解しておくことが重要です。
子供の時期の成長を利用した治療を行うことで、効率よく治療を進めることができるのはもちろん、不必要な治療を避けることができます。また、みなさんが思っている以上に多くの問題点を改善することが可能となります。


あごや顔面は、横(左右)方向 ⇒ 前後方向 ⇒ 縦(上下)方向の順で成長発育が起こります。
※乳幼児の顔が丸く大きいのは、小さい時期には主に横方向が成長発育しているため、
 中学高校生の頃に大人びた顔つきに変化してくるのは、縦(上下方向)の成長発育が生じるため


また成長の量は横(左右)方向 ⇒ 前後方向 ⇒ 縦(上下)方向の順で多くなります。


あごや顔面の成長発育に関しては、様々な形で生じる成長の開始・終了のサイン(身体の変化)を捉え、
成長の様相を正確に把握することが、より効果的な歯科矯正治療を実現するために非常に重要です。



11歳8カ月まで何も治療を行っていません。前歯のガタガタは11歳8カ月から治療を開始しても、問題なく改善することができます。
つまり、成長の様相を的確に把握していれば、あごの成長に伴って自然に改善されていくため、6・7歳といった早い時期からの治療は必要ないということになります。



あごや顔面の成長発育は、口呼吸やほお杖、うつぶせ寝や姿勢が悪いなどの悪い癖により多大な影響を受けます。
あごや顔面骨格の形は、皮膚や筋肉、舌といったやわらかい組織から受ける力により左右されます。
つまり、姿勢が悪い・ほお杖などの癖、慢性的な口呼吸などにより、体や頭・首、あごや顔面の筋肉にアンバランス
が生じてしまうと、あごや顔のゆがみが引き起こされてしまいます。
(# W.R.PROFFIT., CONTEMPORARY ORTHODONTICS, Graber TM., Orthodontics Principles and Pracices, Moyers., Handbook of orthodonticsより)

口呼吸やほお杖、うつぶせ寝、姿勢が悪い等の日常生活での悪い癖について

口呼吸や悪習癖があご・顔面の成長発育、歯並びやかみ合わせに与える影響


口呼吸やほお杖やうつぶせ寝、姿勢が悪いなどの悪い癖は、あごや顔面の成長発育により多大な影響与えます。
また口呼吸や悪習癖は、歯並びやかみ合わせにも多大な影響を与えます。


個々の歯の位置や歯列の形は、唇や頬部、舌やかみ合わせの筋肉から受ける力の均衡によって決定されます。
しかし、口呼吸など何らかの原因でこれらの筋肉に不均衡が生じた場合、歯並びやかみ合わせの異常が引き起こされます。
そのため、口腔およびその周囲組織に不均衡を引き起こす口呼吸や悪習癖はできるだけ早期に改善しておくことが重要です。




いつから治療をスタートするべきか??

あごや顔面、心身の成長発育の様相により治療スタートの時期は異なります

治療開始の時期は、本人の成長具合によって異なります。
また、治療開始は早いほうが良いというわけではありません
上下のあごの大きさの不調和が大きい(出っ歯やうけ口、あごのゆがみの程度が大きい)場合は、早期の治療開始が効果的です。
特にあご・顔のゆがみについては、ある程度早い時期からの治療により、改善することができます。


骨格性の受け口(6歳):成長や永久歯への生えかわりによる改善は期待できないため、早期の治療が必要です

しかし、骨格的に大きな問題が無いようであれば、上下の前歯が生えかわって、側方の子どもの歯が抜けてきた頃から治療を開始しても十分間に合います。手遅れということはありません。


骨格的な出っ歯傾向が認められないため、11歳から治療開始

将来の成長の予想をたて、いつ頃、何をすれば良いか、今できることは何かを知ることは非常に大切です。
そのため、定期的なチェックは欠かせません。

カウンセリングに『早すぎる』ということはありません。ご心配であれば、一度ご相談ください。





舌側弧線装置(リンガルアーチ)

内側に装着する固定式の装置です。
前歯の反対噛みをなおしたり、他の装置の補助装置として使用します。
固定式ではありますが、来院時には外すことができます。
お家で取り外すことはできません。

急速拡大装置(あごの幅を広げる装置)

口呼吸や指しゃぶりやその他の癖などにより、あごの幅が狭くなってしまったり、横方向にうまくあごが成長しなかった場合に使用する固定式の装置です。
この装置はあごの骨ごと広げてくれるので、永久歯のスペース不足の改善を助けたり、上下あごの横方向の成長を促してくれたりします。

マルチブラケット装置(前歯のみ)

”歯科矯正治療”と言えば、皆さんが想像されるのがこの装置です。
歯の表面に装着する固定式の装置です。前歯のガタガタをなおしたり、他の装置の補助としてし使用します。
固定式ではありますが、来院時にははりがねを交換したり、外したりすることができます。
お家で取り外すことはできません。


ヘッドギア(夜間のみ使用する装置)

夜間のみ使用する取り外し式の装置です。
主に出っ歯傾向の患者さんに使用します。
主な目的は、上あごの前方への成長抑制や永久歯スペース確保のための補助装置としてします。あごの成長に作用する装置ですので、成長期あるいは成長期前の患者さんにとても効果的です。
見た目はすごいですが、きちんと使えば、非常に効果のある装置です。
体調が悪い時やお出かけの時などはお休みします。

上あご前方けん引装置(フェイスマスク)

夜間のみ使用する取り外し式の装置です。
主に受け口傾向の患者さんに使用します。主な目的は、上あごの前方への成長を促すことです。
あごの成長に作用する装置ですので、成長期前の患者さんにとても効果的です。
見た目はすごいですが、きちんと使えば、非常に効果のある装置です。
体調が悪い時やお出かけの時などはお休みします。

その他の装置(取り外し式の装置など)

取り外し式装置も使用することがあります。
取り外し式の装置も基本的には夜間のみの使用となります。
”取り外し式”を聞くと、”楽ちんで簡単”といったようなイメージを持たれますが、適応範囲はある程度限定されます。
誰でも取り外し式の装置で治療を進めることができるわけではありません。

舌や口の周りの筋肉の使い方の訓練 (MFT:MyoFunctional Therapy)

舌や口のまわりの筋肉(唇および顔面の筋肉など)正しく機能させるために、”舌や口の周りの筋力トレーニング”が必要となる場合があります。



舌や口のまわりの筋肉が弱くバランスが悪いと、出っ歯や受け口、開咬(前歯が開いている)等を引き起こすことがあります。また治療が順調に進まなかったり、治療後に後戻りしやすいことがあります。



このトレーニングにより、舌や口のまわりの筋肉の正しい使い方や動きを覚えていき、これを習慣化することで、治療後の後戻りを防ぎ、歯並びやかみ合わせの安定にもつながります。

筋力トレーニングには

★舌の筋肉を強くし、正しい使い方を覚える。
★唇や頬など、口のまわりの筋肉をつける。
★正しい舌の使い方や飲み込み方を覚える。
★日常生活の中で、トレーニングで覚えた舌の位置や唇の状態を保ち、正しい飲み込み方を習慣化する。

このようなトレーニングは患者さんごとに異なりますので、担当スタッフがメニューを決め、指導させていただきます。
また、ご家族にお願いして、お家でのレッスンも行っていただきます。
これにより、日常生活での『習慣化』が促進されます。





        舌の位置が出っ歯の原因のひとつでは??

      舌が下方にさがって位置しています。

通常、舌先は上の前歯の裏側付近に位置し、舌全体は上の歯ぐきの中に収まっています。写真では、舌先は下の前歯の裏側付近にあり、舌全体も下方に位置し、下あごの中に収まっています。つまり、舌が下方にさがって位置している状態です。これにより様々な悪い歯並びやかみ合わせが引き起こされます。